本当・伝統の琉球畳とその歴史
このページでは琉球畳の購入には直接関係の無い、琉球畳の話を扱っています。
「琉球畳」という言葉・名称の混乱について
- 上の3つの画像を見ると皆さん、「琉球畳だ」と思われるのでは無いでしょうか?
「えっ、違うの?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。
そう思われて当然です。一般的に広く知られている琉球畳は上の画像全部です。
しかし、世の畳屋さんが見ると「全部琉球畳ではない」となってしまうのです。
なぜなら、多くの畳店が考える琉球畳と言う言葉がお客様の認識と大きく違うからです。
まず、上の画像をご説明しますと、左の画像から
①・・・熊本産目積畳表を使用、正方形の半畳を交互に並べています。
②・・・健康和紙畳表を使用、正方形の半畳を交互に並べています。
③・・・カラー健康和紙畳表を使用、正方形の半畳を交互に並べています。
驚かれる方が多いと思いますが、ほとんどの畳店では上記の全てが琉球畳では無いという事になるんです。
(能登畳店では、上記の全てを琉球畳とよんでいます)
では、ほとんどの畳店が琉球畳としているのはどんな畳かと言いますと・・・、
- 上画像の「大分産七島い」を使用した「青表」で作られた物だけが「琉球畳」だという事なんです。
この「大分産青表を使った半畳縁無し畳」を使っていない、画像①,②,③のような畳の事は、
琉球風畳、琉球畳風畳、縁無し畳、坊主畳とよんでいます。
何故こんな風に「琉球畳」について、一般のお客様と畳業者の間に認識の違いが生まれてしまったのでしょうか?
その責任はお客様向けの情報発信を怠り、
テレビ等のメディアやハウスメーカーなどが誤った「琉球畳」という言葉の使い方を広めていくのを、
指をくわえてノホホンと見ていた畳業界関係者にあります。(私や能登畳店の先代も含みます)
こんな事って、他の業種・業界ではあまり無いと思いますがなってしまったものは仕方が無いです。
ただ現在、大事なのは、
「この琉球畳という言葉についての混乱をどうするべきなのか?」だと思うんですね。
様々な事情があるとは言え、すでに日本全国の畳ユーザー様たちの多くが、
琉球畳とは画像①、②、③のような畳だと思っておられる訳ですから、
「琉球畳を注文したい」「琉球畳の購入を検討している」お客様が混乱しなくてすむ様に、
畳業界全体で考えなければいけない問題ですね。
現在、「琉球畳」という商品名が変な事になっているという事をご説明しました。
能登畳店では、お客様とのコミュニケーションを円滑にするべく、畳縁の無い半畳を交互に敷く場合の全てを「琉球畳」とよんでいます。
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畳店の言う「本当の・伝統の琉球畳」ってどんなの?
- 上の画像は左が大分産の青表で右が熊本産で普通の畳表にも使うい草を使用した目積畳表です。
両方ともに「琉球畳?」に使用される畳表です。
そして、「畳店の言う本当の・伝統の琉球畳」に使用されるのが、左側画像の大分産の青表です。
ここまで読まれて、「んっ?」と思われる方が多いのではないでしょうか?
そうですよね、当然だと思います。
「なんで、本当の琉球畳に使うのが大分産なの?」という疑問が出て当然です。
では、その疑問にお答えするために必要な青表についての詳細をご説明させていただきます。
青表はカヤツリグサ科の七島いと言われるい草を使って織られた畳表です。
名称 | 科名 | 属名 | 種名 |
青表 | カヤツリグサ科 | カヤツリグサ属 | シチトウ(七島い) |
七島いの七島とは鹿児島県の南海上にあるトカラ列島の事です。
青表(琉球畳用の表)はこのトカラ列島で生まれたとされています。
通常のい草が丸い断面をしているのに対して、七島いの断面は三角形をしています。
また、七島いは通常のい草に比べてかなり太く、畳表にする時には2つに割いてから使われます。
畳表に織る時にたて糸として使うのは太い麻です。
見た目にはかなりゴツい感じで荒々しくもあります。(私は好きです)
機能的には通常の畳表に比べて耐久性が高く、表皮が摩擦に強い特徴があります。
大きくて重い大男が暴れまわる柔道場や重たい反物(着物の生地)を引きずる呉服屋さん等で使われた理由はここにあります。
以上が青表の発祥地・見た目・機能についてのご説明です。
ここで、「なぜ、大分産なの?」という疑問に戻ります。
その答えは非常に単純な理由でして、現在、大分県でしか栽培・生産されていないからです。
中国産等はありますが、日本国内では大分県国東市で本当に少数の生産農家さんが作っている物だけだからです。
沖縄本島でも、旧琉球王国圏でも青表(琉球畳表)は作られていません。
だから大分産なんですね。
もちろん昔は沖縄でも栽培・製織されていました。
沖縄では、現在は福岡から持ち込まれた太い(太藺)で織られた「ビーグ畳表」が栽培・生産されています。
長々とご説明しましたが、
この、青畳を使った、しかも縁無し半畳の市松敷き(交互で敷く方法)が、多くの畳店が言う「本当の・伝統の琉球畳」です。
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本当の琉球畳
上で述べたように、多くの畳屋さんが主張する「本当の琉球畳・伝統の琉球畳」とは、
青畳を使った、しかも縁無し半畳の市松敷きだというご説明をしてきました。
では、それが本当の琉球畳なのでしょうか?
実は、そうとも言えないんです。
なぜなら、沖縄本島(旧琉球王国の本拠地)での「本当の琉球畳」は、また別の物を指しているからです。
それでは、沖縄本島(旧琉球王国の本拠地)での「本当の琉球畳」とは何なのでしょうか?
それは青表を使用した畳の全てです。
沖縄では昔、青表を用いていれば畳縁の有無・1畳か半畳かに関わらず、琉球畳と呼んでいたそうです。
と、言うことはですね、本当に厳密な琉球畳という意味では、お馴染みの「半畳・市松敷き」の畳は琉球畳でも何でも無いという結論になってしまうんです。
畳表が青表でさえあれば、「本当の琉球畳」と言えるのです。
「本当の琉球畳」、それは見た目では無く、素材によって定義される畳の1種類という事でありました。
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琉球畳の歴史
琉球王国(琉球国)に畳と言うものが取り入れられたのは、江戸時代に入ってからです。
江戸時代の始まりが1603年、薩摩藩(鹿児島県)が琉球王国を支配下に入れたのが1609年、
琉球文化に畳が取り入れられたのが、その1609年以降となっています。
琉球畳の歴史と言っても、そんなに長くは無いんですね。
1609年から現在までで、ほぼ400年の歴史という事になります。
そして、その400年の間に沖縄でも旧琉球王国圏でも青表(琉球畳に使う畳表)は栽培されなくなりました。
その代わりに栽培されるようになったのは、九州から持ち込まれた「太い」でした。
何を言いたいのかと言うとですね、
青表の発祥地であるトカラ列島、琉球王国の中心地である沖縄本島、そして琉球王国の最大版図のどの地域でも、「本当の琉球畳」と定義される畳が存在したのは、それほど長い期間では無い、という事を言いたいんです。
もう一つ、大事なことを言うとですね、
「本当の琉球畳」に必須である青表の原産地(発祥地)である七島(トカラ列島)が、琉球王国の一部であった期間は、実は西暦1447年ごろから1609年までの、およそ、150年ほどでしかない、という事実があります。
上記が「琉球畳の歴史」です。
すっきりとは書けていませんが、何となく分かっていただけたでしょうか?
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結論、琉球畳とは?
あくまでも、能登畳店としての「琉球畳」という言葉の捉え方の結論になりますが・・・
「本当の琉球畳」に必須な青畳はもう大分県国東市でしか栽培されていないという事実があります。
そして、青畳の原材料である「七島い」の七島はトカラ列島であり、琉球王国に支配されていたのは150年ほどであると言う事実。
そして何より、現時点で沖縄県内で栽培されていて、使われている畳が「本当の琉球畳」では無いという事実。
以上の事実を踏まえると、「本当の琉球畳という物は、もう無いのではないか」という疑問に至ります。
また、「本当の琉球畳」という物に価値があるのかという疑問にも至るのです。
現在、沖縄県(琉球王国の中枢)を含む日本全国において「琉球畳」という言葉が示す商品は、
このような畳だと言えます。
能登畳店の意見としてだけの事ですが、
「歴史的な史実としての本当の琉球畳とはこういう物であった。」という事を語り継ぐのは大事な事です。
しかし、結果的に日本国民に認知されている「琉球畳」という概念をひっくり返す事が、絶対に必要で、それが正義だとは思えないんです。
トカラ列島を発祥地として、琉球王国で育まれた「本当の琉球畳」。
その「本当の琉球畳」を始まりとして日本全国に普及した「現在の琉球畳」。
それは新しい、これからの長きに渡る日本の文化として定着していくと考えます。
能登畳店は「半畳の市松敷きの畳空間」こそが琉球畳として、これからの歴史を作っていくのだろうと考えています。
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